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したたかな金融リンケージ
華僑の対中国投資は、必ずしも自己資金による直接投資方式をとるとはかぎらない。ホンコンを経由し、対中国輸出(商品)による、いわば「水増し」方式がとられているという話を現地で耳にした。つまり中国大陸に輸出する商品(機械など生産手段とは限らない)の価格を大幅に引上げ、たとえば一〇万ドルを二倍の二〇万ドルに水増しして、この水増し分すなわち一〇万ドルを中国での投資に残すというやり方があるという。

この方式でいけば、かりに投資計画がその後うまく軌道に乗らなくなった場合、そのロスを自ら被ることなく、結局、水増しによるところの、中国政府の外貨を横取りすることによって全額回避できるという、華僑一流のしたたかさがここに看取できるのである。このやりくりの仕方は、私金融の一変形を示すものといえるが、華僑資本の性格の一面をよく表わしていると思う。

中国における外国資本投資は、近年来中国の対外開放政策によって刺激され、一〇〇億ドルを超えたといわれるが、そのうち民間直接投資が四〇億ドルほどと思われる。その半分以上が華僑による投資とすれば、二〇億ドルほどが中国の人民銀行(中央銀行)所有の外貨流出ではないかと推測される。ホンコン経由の対中国再輸出がここ数年来急速に増大し、八五年には前年比六四%増の四六〇億HKドル(五七億米ドル)に達していることは、華僑による対中国水増し投資と無関係ではあるまい。

いうまでもなく、この対中国水増し投資の背後には、ホンコンが私金融の国際中継基地としての条件(組織)をつねに用意していることを忘れてはならない。ホンコンには歴史的に、出身地を営商集団の形成に固く結びつける、いわゆる幇が散在し、カントンパン テイオチユウパン ホツケンパン シャンパイバンいわゆる広東幇、潮州幇、福建幇、上海幇などが、特定分野の商取引に勢力基盤を保っている。たとえば米穀取引に対し、商才に富んでいる潮州幇は、タイで最大の勢力をもち、タイの金融・経済を牛耳る陳弼臣一族(陳族系財閥)がある。その陳族系が主宰するバンコク銀行は、ホンコンのほか、台北・東京・シンガポールークアラルンプール(マレーシア)・サイゴン(一九七五年まで、南ベトナム)・ロンドン等海外に支店網をもち、その傘下に多数の貿易取引・運輸・保険会社を収めている。

東南アジア各地には、幇を基礎にした商業組織が散在し、それらはいずれもホンコンに特定の金融組織をもっていることは常識になっている。いま一つは、金取引における華人の勢力である。ホンコンは金取引高において、すでに七〇年代なかばニューヨークを凌ぎ、ロンドンーチューリヒと並んで、世界三大金取引センターの一つにのし上がってきたことはよく知られているが、いまからほぼ八〇年前から華人による金銀取引協会が発足され、現在でも一九三社が会員になって、九九・九五%の純金トロイオンス(米ドル建)の取引に参加していることはあまり知られていないようである。

ロンドンとの直接取引網をもち、また鋳造冶錬プラント設備をも用意しているので、華人社会の金取引がここで集散される。利昌金舗(胡鴻発氏)は、その中でリーダー的地位にあるといわれるが、その金融活動はさだかでない。一般にいって、ホンコンでは金飾(ダイヤ・時計など高価飾品)店は同時に民間外貨両替の業務を兼ねており、その両替レートは、市中銀行と比べてはもとより、一般に割高なホテルのフロントに比べてもべらぽうに高いが、夜遅くまで営業しているので便利である。また、金の取引と直接からんでいることもあって、私金融の格好の活動基地になりがちである。

この金飾商店はホンコンでどのくらいあるのか。質屋・両替店を含めてゆうに1000店は越えよう。しかし、繁華街のいたるところに林立していることは、シンガポールと違って、その庶民性を窺える。私金融の国際的中継基地としての条件は、一つはこの金飾取引の普遍性と庶民性にあるのかも知れない。

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